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第40号(2002年12月) 証券市場の規制を巡って

空売り規制の強化をめぐって

福光寛(成城大学教授)

〔要 旨〕

 小稿は,空売り規制の導入,その後の規制の変遷などを検討することによって,直近の空売り規制強化をどのように把握するかをめぐり幾つかの新しい論点の提示を試みたものである。まず,占領軍の導入指示にもかかわらず,日本側が導入に躊躇したことが伺えるとの指摘を行った。このような躊躇を見れば,空売り規制が戦後存続し続けたこと自体を説明する必要があるが,長期産業資金供給の場として証券市場を考える伝統的な市場観が背後にあると考えられる。空売り規制が機能しなかった問題については,規制範囲が狭かった問題と,規制が無視され続けた問題とに分けて論じた。まず規制の適用範囲については,米国法にならって適用範囲を限定するべきだとの一部の法学者の主張は,その典拠文献からは導けないと指摘している。しかし他面で,現実に日本では適用除外取引が膨らみ適用範囲は極めて限定されるに至っていた。規制が無視されていた問題では,株価の値下がり局面で度々空売りが注目されていた事実を挙げて,空売り規制は少なくとも無視されてなかったが,確かに規制を発動して処分することは1998年まで行われなかったとした。1998年に,適用取引も限定されかつ放置されていた空売り規制を使った行政処分が出され,さらに空売り規制の適用範囲の拡大まで行われるという大きな変化が生じた理由がそこで問題になる。その理由として,ヘッジファンドによる空売りから日本の市場と金融機関を守ろうとする行政と政治家が一体となった動きを小稿は注目した。この日本の動きはヘッジファンドに対抗するアジア諸国の動向と結果として連動するものでもあった。

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