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第43号(2003年9月)

東アジア・ビジネス・グループのファイナンスに関する一考察
―リスクシェアリング効果は存在するか―

永野護(三菱総合研究所制作・経済研究センター主任研究員)

〔要 旨〕

 本稿では東アジアのビジネス・グループに属する企業が,企業グループを形成することにより,事業面 での便益を享受していたか否かについて,1994年から2000年までの企業パネルデータを用いて実証分析を行った。インドネシア,マレーシア,タイ,韓国4カ国について,グループに所属する企業,独立系企業それぞれのデータセットを用いた実証分析の結果 ,本稿が分析対象とする4カ国全ての国々において,ビジネス・グループを形成する企業のグループ内企業間信用が財務リスクを緩和している傾向が検出された。このことから東アジアのグループ内ファイナンスは,情報コストが外部資金よりも小さい資金調達手段のひとつとして,内部資金に次いで各国の企業金融に貢献してきたことが示された。一方で,こうした内部資金と外部資金との間の中間的な資金調達手段を活用できない独立系企業は,自らの財務安全性を維持するため,負債と資本の構成比をコントロールすることにより潜在的な金融困難性のリスクに対処している傾向が見られた。

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