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第43号(2003年9月)

第一次世界大戦後における借換債の日銀引受

武田勝(中央大学助手)

〔要 旨〕

 第一次大戦期の後半以降,寺内正毅・原敬内閣による「積極財政」によって国債発行額が増大するなかで,国債の満期構成の短期化が急激に進んだ。その帰結として,1920年代には借換えの連鎖現象が起こる。本稿の課題は,いわゆる「借換の連鎖時代」といわれた,第一次大戦期後半から20年代中葉における借換債の日銀引受の実態を明らかにすることである。この作業は日本における他の時期(日清・日露戦時,日露戦後,高橋財政期以降など)の国債管理政策と日銀の関係を考察する上でも重要なものであろう。以下,本稿の結論を要約する。
 この時期の日銀引受は,借換債の引受という形で,10年間(1917〜26年度)実施されていた。それは形式的には日銀の乗換えとなっていたが,実際には売却を前提として引受が行われており,日銀が引受主体として恒常的に発行市場に介在していたのである。それは確実な借換えを保証するものであったが,他方で日銀が引受主体として介在してはじめて,当時の借換えの実施が可能になっていたことを意味している。
 以上の点を踏まえれば,戦前の日本では国債発行における日銀信用の利用は断続的に観察されることとなり,いわゆる高橋財政期における国債の日銀引受が突如として断絶的に起きたのではないことがわかる。

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