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第45号(2004年3月)

明治初期の株式取引所設立出願

小林和子(当研究所理事・主任研究員)

〔要 旨〕

 古今東西を問わず,証券市場の出発点は証券取引所の設立に求められてきた。数十年,数百年の歴史を持つ成熟した市場は,発行市場と流通市場を持ち,両者の有機的な関連があってこそ市場の機能が発揮されると考えられるが,出発点の市場は異なる。最初に証券の発行者となるべき経済主体が登場し,対応して証券の保有者となるべき剰余資金保有者が姿をあらわす。それらを前提として証券取引が自然発生し,やがては証券取引所の淵源となる。あるいはこれらの過程を極めて短期間に収縮するか省略して,証券取引所が設立される。日本における証券市場の出発点は後者である。
 日本において最初に設立された証券取引所は明治11年の株式取引所条例に基づいた東京株式取引所であり,相次いで設立された大阪株式取引所である。しかしこれ以前に,条例の側では明治7年株式取引条例,明治9年米商会所条例の系列があり,取引所出願の実例もあった。この小論では新たに見つけられた「東京第一株式取引所創立出願」関係書類を中心において,最初の出願―株式取引条例―第二期の出願―米商会所条例―第三期の出願(東京第一株式取引所)案―東京株式取引所の出願―株式取引所条例―東京株式取引所の再出願を導くまでの,出願と条例作成の関係を明確にする。この過程は初期の観念的な条例が,形成されつつある市場の実態を受け入れ,読み込んで,現実に実行可能な条例に修正されていくものであった点が興味深い。

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