第46号(2004年6月) 金融ビッグバン後の投資信託の現状と課題
米国の投信不正取引事件と制度改革
高橋元(作新学院大学教授)
漆畑春彦(みずほ証券経営調査部部長)
- 〔要 旨〕
-
ニューヨーク州司法当局は,2003年9月,ヘッジ・ファンド「カナリー・キャピタル・パートナーズ社」が大手金融機関と共謀し,不正取引を行っていたことを発表した。これを機に,SECなど規制当局は金融機関の捜査を開始したが,その結果,半年余りの間に,20社を超える運用会社・証券会社の不正行為が発覚している。明らかになった不正行為は,時間外取引,短期売買だが,これらは特定顧客や業者自身の利益を優先するものである。規制当局は直ちに規制案を作成し再発防止に努めているが,これは事件発生前から進めてきた改革案を含む包括的なものとなっている。ただ,これら規制案については業界などから問題も指摘されており,今後の米国資産運用ビジネスを巡る環境は流動的である。一方,不正取引の日本への影響はこれまでのところ深刻でないものの,日本固有の問題も存在しており,投信への投資家の信認確保や一層の普及に向けた課題は多い。
その他の記事
- わが国の株式投資信託のFlow-Performance関係:序説
-
銀行窓販と投資信託の普及
―地方銀行の投信窓販から期待されること― - 地方銀行の投資信託窓販と資産管理サービス業務の展開
-
投資信託の運用・管理の不均衡
―外国証券事務管理の観点から― - 投資信託における債券取引の現状と債券取引の電子化について
- オルタナティブ投資の概要:ヘッジファンドとプライベートエクィティ
- 運用能力と年金のマネージャー選択
- 資料:投資信託市場の現状と展望
- 資料:個人投資家に投信の長期投資は根づいたのか?
- 資料:法改正を受けた実務の対応
- 1970年代のアメリカの国債政策:インフレと財政規律
-
日本における年金課税と確定拠出年金
―イギリスとの比較― - 株式上場市場の変更による流動性への影響
- マクロ統計による取得課税ベースの推計(下)