第46号(2004年6月) 金融ビッグバン後の投資信託の現状と課題
資料:個人投資家に投信の長期投資は根づいたのか?
高瀬浩(QBR投資情報事業部主席研究員)
- 〔要 旨〕
-
1990年以降に設定された追加型株式投信の資金流出入金額を調べてみた。そうすると,全体で10兆円弱の流入超過となったが,日本株投信の流入額は全体の1割未満にとどまる一方で,外債で運用する投信が中心のバランス型がその6割強を占めている。また,流入額を投信の設定時期毎に区別してみると,バランス型では前年以降(最大2年以内)に設定された投信の流入額と,前年以前設定のものの比率は6対4で設定時期に関わらず流入が継続しているが,前年以前に設定された日本株投信は流出超過となっている。日本株投信は設定から時間が経過すると解約されやすいことを示している。
この結果からは,投信全体では長期投資が浸透してきたとみることが可能であるが,日本株投信では長期投資が根づいているとは言えそうにない。この背景としては,日本株投信の長期の投資が短期投資以上に報われたとの運用成績が全般的にでていないことと,投信購入層の主体がハイリスク・ハイリターンでの資金運用の必要性に乏しい高齢者層に偏っており,投資家全体のリスク許容度が低くなっていることがあげられる。
このような状況の下,投信の長期投資を実践する投資家を増やすための方策の一つとして,一つの投信を長期で保有することにとらわれずに,投資家が自らのリスク許容度やニーズに応じて,複数の投信の中から組み合わせを選択し,比率をいつでも自由にスイッチできる,いわば自分自身でファンド・オブ・ファンズを運用するような仕組みを投資家に提供することが考えられる。
その他の記事
- わが国の株式投資信託のFlow-Performance関係:序説
-
銀行窓販と投資信託の普及
―地方銀行の投信窓販から期待されること― - 地方銀行の投資信託窓販と資産管理サービス業務の展開
- 米国の投信不正取引事件と制度改革
-
投資信託の運用・管理の不均衡
―外国証券事務管理の観点から― - 投資信託における債券取引の現状と債券取引の電子化について
- オルタナティブ投資の概要:ヘッジファンドとプライベートエクィティ
- 運用能力と年金のマネージャー選択
- 資料:投資信託市場の現状と展望
- 資料:法改正を受けた実務の対応
- 1970年代のアメリカの国債政策:インフレと財政規律
-
日本における年金課税と確定拠出年金
―イギリスとの比較― - 株式上場市場の変更による流動性への影響
- マクロ統計による取得課税ベースの推計(下)