第52号(2005年12月)
日本企業のIR活動における
SRI(社会的責任投資)の位置付け
高山与志子(ジェイ・ユーラス・アイアール マネージングディレクター)
- 〔要 旨〕
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現在,日本の国内外で,SRI(社会的責任投資)に関する関心は急速に高まっており,企業のIR活動も,適切な対応を迫られている。IR活動の意思決定に大きな影響を与えるのは,数字の上でのSRIの実態である。自社の既存株主および今後株主になる可能性が高い潜在株主の運用資産の中で,SRIがどれくらいの割合を占めているのかに関する正確なデータが不可欠である。しかし,現在,日本では,SRIに関する定量的な分析がほとんどなされていないため,SRIをIR活動全体の中でどのように位置づけ,他のIR対象者と比べてどれほど重点を置いたらよいのか,戸惑っている企業が多い。このような現状に鑑み,本稿では,主として定量的な観点から,IR活動におけるSRIの重要度についての分析を行なった。筆者の分析によれば,日本企業の既存および潜在株主である国内外の機関投資家の運用資産額において,SRIが占める割合はまだ低く,そのような機関投資家の投資決定において,CSRは主要な決定要因になっていない。つまり,運用資産額という観点からすれば,現時点では,日本企業のIR活動におけるSRIの優先順位は,それほど高くないのである。しかし,SRIは,現在急速にその運用額を増やしており,成長率という観点からは,今後のSRIの動向を注意深く見守る必要があるだろう。