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第53号(2006年3月) 新しい時代の投資家行動

証券化と倒産隔離をめぐる理論状況

高橋正彦(横浜国立大学大学院教授)

〔要 旨〕

 資産流動化・証券化スキームがオリジネーターの倒産手続に巻き込まれないという意味での倒産隔離性の法的構造は,(1)オリジネーターからSPVへの資産譲渡に係る対抗要件の具備,(2)資産譲渡の真正売買性,(3)倒産管財人による否認リスクの回避,という三段階から成っている。これらのなかでも,真正売買性,すなわち,「資産譲渡が売買か担保か」という問題が,中心的な論点として議論されてきた。従来の真正売買論は,真正売買性のメルクマールとなる様々なファクターを総合的に判断するというものであった。
 2001年9月に経営破綻したマイカルの会社更生事件において,同社グループが保有していた店舗不動産の証券化(CMBS)案件の真正売買性をめぐり,倒産法学者等による論争が展開された。そのなかで,従来の真正売買論を批判し,譲渡担保に関する判例・学説に従って,(1)被担保債権の存在,(2)担保目的物の処分に係る実行権と補充性,(3)設定者による受戻権という三要件により判断するべきである,との見解が主張された。
 こうした近時の有力説が重視する担保権の要件は,担保取引に係る主要事実に相当する一方,従来の真正売買論が挙げる様々なファクターは,そうした主要事実を基礎付ける間接事実群に相当する。両者は,排斥し合うものではなく,両立・補完し得るものである。
 なお,2005年初に施行された新・破産法には,流動化・証券化に関連する規定が含まれている。これにより,法的不確実性がある程度低減されたが,残された問題も少なくない。

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