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第54号(2006年6月)

日本証券取引所の創立と活動(下)

小林和子(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕

 前々号(上)で日本証券取引所の創立までを,前号(中)で活動の前半を見たが,本号(下)で戦時最終段階の活動を見る。その活動は戦時金融統制の一環に強く組み込まれ,形式的には証券統制会に収斂すると共に,実質的には昭和19年半ば以降非常事態への対応に追われ,株価安定策が最前面に出るに至った。とりわけ20年7〜8月には日本証券取引所自体による買い出動が激増し,証券取引所経営としては大きな赤字を計上することになった。日本証券取引所は戦末に全国市場取引を臨時停止したまま再開されることなく,戦後昭和22年4月に特別法で解散した。
 本論文では第一に日本証券取引所の成立,活動,解散までの全体像を描くことを心がけた。その歴史的評価としては,戦時国家が強く介入した市場運営の実験が何を戦後市場に残したかを考えることになる。いうまでもなくそれは危機時の株価安定策至上の思考方法で,株価維持による市場維持は戦後50年にわたり証券業者,投資家,行政を含めて日本市場の底流をなした。市場の外形を重視する思考方法は日証時代に深く関係者に埋め込まれたものといえるのではないか。

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