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第54号(2006年6月)

機関投資家取引を巡る米国証券会社のIT戦略

伊藤慶昭(大和総研主任研究員)

〔要 旨〕

 近年,米国の機関投資家取引を巡る環境は一層厳しさを増している。この背景の1つとして株式取引市場を例に取ると,全米取引所の他にECN等の電子私設市場が発達して市場構造が複雑になったことが挙げられる。そのため市場参加者は,各市場における状況を即座に捉えて最適な発注市場を選定することが,売買戦略上,非常に重要となってきた。さらに2001年1月から十進法化が施行されると,呼値当たりに置かれる株数や注文当たりの株数が減少し,以前と比較して大口注文の執行が難しくなっている。このような状況の中で,機関投資家取引においてはバイサイドが求める売買戦略を的確に履行していくアルゴリズム・トレーディング(Algorithmic Trading)やDMA(Direct Market Access)等の自動回送・執行機能が急速に普及している。
 また,最近はヘッジファンドの急速な拡大が注目されており,ヘッジファンドがバイサイドの中で重要顧客の位置付けになりつつある。特に一部のセルサイドでは,ヘッジファンドが行う複数アセット間に渡る裁定取引(マルチアセット・トレーディング)に着目して,彼らの要求に迅速に対応できるよう,これまで金融商品別に分離したシステム基盤や管理データを統合化する動きも出始めている。
 本稿では,1)アルゴリズム・トレーディング,2)DMA,3)マルチアセット・トレーディング(Multi-asset Trading)の3テーマに焦点を当て,各サービスの特徴や普及の経緯と現状を報告すると共に,将来に向けた課題点やポイントに関しても考察していく。

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