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第54号(2006年6月)

株式信用取引の担保にかかる法的性質について

前田和宏(日本証券金融総務部次長)

〔要 旨〕

 わが国の証券市場に信用取引制度が導入されて以来半世紀以上が経過したが,その仕組みが複雑なことや証券市場における特殊な取引手法との認識からか,これまでその法的構造を研究した文献は少ない。
 最近の信用取引拡大のなかで,投資家保護の観点からその法的性質を明らかにする必要があるとの視点から,株式信用取引の担保を中心に検討したものである。
 信用取引の仕組みについて簡単に概観したのち,その法的性質は証券会社と顧客との間の売買委託契約とこれに連繋した消費貸借契約から成り立つものであることを論じ,信用取引の特徴の一つである「社内対当(喰合い)」の仕組みについて説明する。
 次に,信用取引における担保の法的性質について検討する。とくに重要な論点である信用買建てに伴う買付株券については,従来の通説は顧客が証券会社に対して有する株券の引渡請求権を担保として有するに過ぎないとし,信用取引買付株券の質権または譲渡担保の成立は認められないとする。しかしながら,保管振替制度によって共有概念が明確になっていることから,顧客は当該株券についての所有権を取得し譲渡担保権を取得するものと考える。
 また,株券電子化後の導入される新しい振替制度について概観した後,現行保振制度のとの比較を中心に論述する。信用取引買付担保株券について,新しい振替制度のもとでは譲渡担保権の成立が一層明確になるものと考える。

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