第55号(2006年9月)
インターネットIRサイトの質の規定要因
―株主優待制度に着目して―
記虎優子(大阪成蹊短期大学経営会計学科助教授)
- 〔要 旨〕
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最近,個人投資家によるインターネットを経由した取引が急激に増加し,個人投資家の証券市場参入が進んでいる。こうした状況下において,企業は,株式の持合い解消に伴う,個人の安定株主化の必要性と相まって,自社のファン株主としての個人投資家を戦略的に誘致・維持する姿勢を強めている。
本稿では,株主優待の実施やインターネットIRサイトの充実を個人投資家の誘致・維持に対する企業の戦略的姿勢の現われと捉えて,株主優待の実施がインターネットIRサイトの質に影響を与えるのかどうかを実証的に検証する。まず,t検定およびWilcoxonの符号付き順位和検定ないし独立性の分析を行って,インターネットIRサイトの質に影響を与えると予測されるそれぞれの要因と,インターネットIRサイトの質との関係を検証する。次に,プロビットモデルによって,インターネットIRサイトの質に影響を与えると予測される要因をすべて考慮に入れて,インターネットIRサイトの質の規定要因を検証する。
そして,株主優待を実施する企業の方が,インターネットIRサイトの質が高いとの証拠を提示し,株主優待とインターネットIRサイトの充実という,企業の2つの戦略的行動の関係を明らかにするとともに,日本企業のインターネットIRサイトの質の規定要因に関する証拠の蓄積に貢献する。