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第58号(2007年6月) EU単一金融市場の展開と英国の対応

欧州証券決済コード・オブ・コンダクト

吉川真裕(当研究所客員研究員)

〔要 旨〕

 証券取引所の統合,証券決済機関の統合,清算機関の統合という形でヨーロッパ株式市場統合へ向けての議論の重心は移ってきたが,民間ベースではなかなか進展しそうにもない。そこで,欧州委員会がイニシアティブをとることを期待する動きもみられるようになった。
 欧州委員会は2002年11月のISD改正コミュニケにおける証券決済システムの見直しへ向けて,2001年4月にコンサルテーションを開始し,その成果は2001年11月にジョヴァンニーニ報告という形で結実した。報告書は15の障害を指摘したが,それらに対する対処策は先送りした。そして,2003年4月に第2次ジョヴァンニーニ報告が公表され,そこでは法律や税制の問題を除けば欧州委員会による「上からのアプローチ」ではなく,市場関係者が自主的に障害の除去に取り組むことが提案された。
 これを受けて,欧州委員会は2004年4月に再びコンサルテーションを開始したが,欧州委員会担当委員交代もあって,この問題に進展は見られなかった。しかし,2006年に入って欧州委員会は自主的な取り組みを市場関係者に強く要請し,これを受けて2006年11月にコード・オブ・コンダクトという形で証券決済システム改革の合意ができあがった。
 2008年1月のコード・オブ・コンダクト実施が予定通りに実現できるかどうかはわからないが,今回,ようやく合意に達したコード・オブ・コンダクトはこれまでの紆余曲折のとりあえずの着地点として評価されるべきであろう。

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