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第59号(2007年9月)

ドイツの社会的市場経済理念と貯蓄銀行の金融機能

黒川洋行(関東学院大学准教授)

〔要 旨〕

 ・ドイツの銀行システムは,民間商業銀行,信用協同組合,そして公的な貯蓄銀行の3つの銀行セクターによる分権的な構造が特徴となっているが,なかでも,公的銀行である貯蓄銀行グループが,国内最大のシェアをもっているばかりか,世界最大の総資産規模を有する巨大金融グループとなっていることが注目される。
 ・貯蓄銀行は,地方自治体等が出資する公的銀行であり,その活動範囲は,当該自治体の行政管轄区域と同一でなければならない。また,その金融機能は,地方自治体のメーンバンクであるほか,地域経済振興,中小企業金融,国民の貯蓄形成促進など,公益性の高い重要性をもっており,この点において,利潤の最大化を行動原理とする民間商業銀行とは一線を画しているとともに,地方分権的な統治システムをもつドイツにおいて,各々の地方経済の均衡ある発展に資する重要な役割を担っているもの評価できる。
 ・ドイツの「社会的市場経済」の理念とは,戦後ドイツの経済秩序を指導する基本原理であり,その本質は,自由な市場経済秩序による競争原理を機能させることを基本としつつも,健全なる市場メカニズムの機能が阻害されるような事態が予見される場合には,国家による必要な措置を講じることにより,独占・カルテルなどの弊害を取り除くといった介入の必要性をも同時に認め,社会的に均衡のとれた人間的な経済社会を実現することをめざすものである。
 ・そして,貯蓄銀行に与えられた公的任務と機能は,戦後ドイツの経済原理である「社会的市場経済」の理念の実現を,金融サービス面から支えるものと理解され,それゆえ,貯蓄銀行の公的銀行としての重要性が低下することは当面ないものと予想される。

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