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第60号(2007年12月)

証券業における職業倫理―米国の動向とわが国への示唆―

若園智明(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕

 本稿では証券業における職業倫理に関して,近年の米国の動向等を踏まえながら,わが国の現状と問題点について考察することを目的とする。
 営利企業の基本的な目的は利潤の追求であるが,同時に利害関係者間で必然的に発生する利害対立を社会的に容認可能な水準内にまで抑制することが常に求められる。このような利害対立の効率的な抑制を法令や自主規制ルールのみに準拠して行うことは困難であり,道徳的な規範(職業倫理)が不可欠となる。また証券業は,他の産業と比較して (1) 公共財である資本市場を活用し,(2) 当該市場への参加を通じて経済や社会に貢献する特徴を持ち,(3) その業務には極めて専門性の高い知識が求められる業種であることから,一般的な道徳規範に加えて証券業のプロフェッションに相応しい水準の職業倫理を備え,社会的な名声を高めていくことが絶えず求められている。
 先行研究の結果を見ると,職業倫理を効率的に普及させるためには,そのプロセスである自律型アプローチと他律型アプローチの最適な配分に関する検討が重要となる。自律型を優先としながら,効率的な外部制度として他律型のアプローチを用いた場合,職業倫理の効果は総体的に発揮されよう。米国と同様にわが国でも検討されているプリンシプル・ベースへの移行をともなった資本市場規制の見直しは,証券会社に対して更なる自己規律を要求し,職業倫理の地位を向上させるであろう。

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