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第66号(2009年6月)

CSR活動がリスクに与える影響について

奥田真也(大阪学院大学准教授)

〔要 旨〕

 最近企業の社会責任(Corporate Social Responsibility:以下CSRと略す)活動に注目が集まりつつあるが,そのような活動を行う根拠の一つとして,CSR活動リスクマネジメント活動の一環として捉えようとする見解がある。もしこのような見解が正しく,かつその活動が有効であるならば,CSR活動を積極的に行っている企業はその企業が直面しているリスクを減少できているはずである。このような現象が確認できるか否かについて検証することが本稿の目的である。本稿では,リスクを証券市場の観点から評価するために,市場モデルを用いて,企業の直面するリスクをシステマティックリスクと個別リスクの二種類のリスクに分解した。そして,二種類のリスクとCSR活動との関係を考察した。その結果,システマティックリスクは総合的なCSR活動との相関関係がほとんど見られなかったものの,個別リスクはCSR活動と負の相関が見られた。この傾向は個別のCSR活動とシステマティックリスクや個別リスクとの間においても同様な関係が多く観察された。これらの証拠は,経済活動全般と相関する証券市場において価格付けされるようなリスクを減らすことにCSR活動は役に立っていないかもしれないが,個々の企業特有のリスクを軽減することにCSR活動は役立つ可能性を示唆する結果であるといえよう。

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