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第66号(2009年6月)

中国銀行業への戦略投資家の出資―経営効率は改善したか?―

山口昌樹(山形大学准教授)

〔要 旨〕

 本稿の分析対象は中国の銀行業に対する戦略投資家の出資である。2001年12月に中国がWTOに加盟して以降,戦略投資家によるクロスボーダーM&Aが注目を浴びることとなった。こうした出資は銀行の効率改善につながるのか。この課題設定は途上国への外国銀行の進出効果という研究潮流に属する。ただし,出資上限が20%であるため必然的に少数株主による出資の効果を検証する点が既存研究と異なる。また,出資の効果が業態によって異なるのではないかという課題設定をしている点も相違点として挙げられる。
 分析には2000年から2007年までの中国の銀行の財務データを用いた。効率性は財務比率ではなく,効率性スコアをDEAによって算出した。この効率性スコアをパネルトービット分析で回帰させて効率性に影響を与える要因を検証した。検証の結果,出資による効率改善の効果は城市商業銀行でのみ観察された。効果が全般的なものでなかった要因としては出資からあまり時間が経過していない案件もあることや少数株主であるがゆえの動機付けの弱さが考えられる。
 戦略投資家への高い期待とは裏腹に効率に与える影響は顕著なものではなかった。しかし,この現実こそが銀行改革の等身大の姿を描き出している。そもそも戦略投資家による出資は改革プロセスの1つに過ぎない。銀行改革の大局からすると戦略投資家によって大半の問題が解決するかのような見方は過大な期待と言わざるを得ない。データによる客観的な検証によって改革を評価する姿勢が求められる。

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