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第68号(2009年12月)

金融システム危機と金融規制改革(上)

佐賀卓雄(当研究所理事・主任研究員)

〔要 旨〕

 2007年夏以降の金融市場の混乱,その後の危機の深化と機能不全は,実体経済への深刻な影響が危惧される段階を迎えるに至った。これに対して,各国中央銀行はふんだんな資金供給,金利の引下げ,および政府による金融機関への資本注入が実施され,金融市場はようやく小康状態を迎えている。
 今回の金融危機は「100年に一度」あるいは「今回は違う」といわれることがあるが,そのパターンは過去の危機の展開と酷似している。もちろん,証券化のメカニズムによりもともと非流動的なリスクの高いサブプライム住宅ローンが市場取引の対象になったということが今回の特徴であり,その構造と危機の発現のプロセスを明らかにすることは決定的に重要である。
 このこととの関連で,住宅ローンの供与の実態,および証券化の構造とそれを支える格付会社の役割が明らかにされねばならない。
 また,証券化商品市場の主要プレーヤーであった独立系大手投資銀行がすべて姿を消すという異常事態がどのようにして生じたのかも重要な検討課題である。
 これらの検討から,共通しているのは「規制の失敗」が大きな原因の一つであることが明らかになる。したがって,金融市場の機能の強化,発展のためには,部分的な個々のプレーヤーの規制に止まらない,体系的かつ包括的な改革が必要である。

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