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第68号(2009年12月)

米国における金融規制改革の方向性と問題点

若園智明(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕

 リーマン・ブラザース社の破綻を契機として発生した金融危機を境目として,米国内での金融規制改革議論が変化していることがわかる。米国の規制改革自体はすでに2006年頃よりその必要性の高まりの認識とともに,具体的なビジョンをともなった議論が行われていた。しかしながら金融危機の発生と国際的な改革議論への協調により,米国内での改革にともなう問題意識とその目標が大きく変化していることがわかる。本稿は,リーマン・ブラザース社破綻前後を境として,主に米国で公開された各種報告書やステートメント等を中心にして,米国金融規制改革の変遷を概観し,内在する問題の指摘をする。
 本稿では第1に,金融危機以前に米財務省から提示された「ブループリント」をもとに,当時の米国改革の本筋が国際競争力の強化と国内規制体系の効率化であったことを示す。第2に,深刻な金融危機への対応として提示された米国オバマ政権の改革案ならびに,米国連邦議会下院において審議中の金融規制改革案を複数取り上げ,その中身を検討することで,金融危機発生後の米国議論の特徴を述べる。最後に,SECの施策を例として挙げることで,市場から政府へのリスク管理の移転を行う際に,規制当局のSupervise問題が存在すること,ならびに現状では当該問題がもたらす政府の失敗の危険性が新たな懸念として考慮されるべきことを論じる。

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