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第70号(2010年6月)

スウェーデンの資産保有税政策―二元的所得税との関連で―

馬場義久(早稲田大学教授)

〔要 旨〕

 本稿の課題は,資産所得税と資産保有税の役割分担のあり方に注目して,最近のスウェーデンの純資産税廃止政策と固定資産税改革に評価を加えることにある。すなわち,二つの資産保有税が同国の二元的所得税のもとでの資産所得税をどう補完してきたのか,その実態を明らかにして上記の資産保有税政策の妥当性を吟味する。
 本稿で得られた分析結果は以下のとおりである。
 第一に,純資産税による資産所得税の課税ベース補完機能の実態的中心は,居住用固定資産の帰属所得である。
 第二に,純資産税による最高所得階層の租税負担率上乗せ機能は,資産所得税負担率の1/6に過ぎない。
 第三に,資産所得税の課税ベースが広く設定される二元的所得税のもとでは,純資産税の廃止は妥当な政策と考えられる。課税ベース補完機能は固定資産税の方が効率的な政策手段であり,経済的富裕者の中心的な課税ベースであるキャピタルゲインについては,資産所得税制によって効果的に課税されている一方で,純資産税はキャピタルゲインを生み得る資産に対して十分には課税していないからである。
 第四に,固定資産税は二元的所得税のもとでも居住用固定資産の帰属所得課税を補完し,資産所得税制の中立化・実効化を図る上で重要である。この観点から見た今回の固定資産税改革の問題点は,固定資産税に代わって導入される地方政府サービス負担金が,課税固定資産価値に十全にリンクしていないという点にある。

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