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第74号(2011年6月)

米国証券取引法と域外適用 ―Morrison判決を参考に

藤澤尚江(筑波大学大学院准教授)

〔要 旨〕

 近年,証券取引は,ますますグローバル化が進んでいる。これに伴い,国際的な訴訟も増加しており,その中には,米国外の会社が,米国外で行った行為について,米国で,米国の証券取引法に基づき訴訟を提起されるケースも含まれる。日本の会社も例外ではなく,トヨタ自動社も,米国で訴訟を提起された会社の一つである。しかし,そもそも米国の領域外で行われた行為を,米国法の適用を通じて規律することができるのか?できるとすれば,いかなる場合にそれが認められるのか?これが,いわゆる域外適用の問題である。
 米国の証券取引法に関する域外適用の判例は,下級審により形成され,効果テスト,行為テストと呼ばれる基準を中心に発展してきた。ところが,2010年のMorrison最高裁判決は,これらの効果テストおよび行為テストを否定し,新たな基準を提示するものであった。このMorrison最高裁判決を受け,ドッド=フランク法も,証券取引法の域外適用に関する規定を設けた。しかしながら,Morrison最高裁判決の示したルールには問題があり,それを受けて制定されたはずのドッド=フランク法の規定は,Morrison最高裁判決を否定するものとも肯定するものともならなかった。
 本稿は,Morrison最高裁判決およびドッド=フランク法が採用したルールとはいかなるものかを示し,さらにその問題点を明らかにすることで,国際的な証券取引の当事者が,規制法の適用に関し予測可能性を高めることを目的とするものである。

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