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第74号(2011年6月)

取引所規則に基づく開示規制違反に対する民事責任について(上)

小林史治(筑波大学大学院博士後期課程)

〔要 旨〕

 金融商品取引法・会社法のいずれにおいても開示制度が設けられているところ,金融商品取引法では,開示規制違反時における有価証券発行会社や当該会社役員等の民事責任を規定し,また,会社法においても,不実開示の役員等の責任に関する規定があり,不実開示が代表取締役その他の代表者によって行われた場合,株式会社自身がその責を負うこととなる。
 ところで,上場会社は,制定法である金融商品取引法及び会社法の開示規制のほか,上場している金融商品取引所が定める規則に基づいて情報開示をする必要がある。しかし,投資者保護という観点からいえば,金融商品取引所の規則違反があった場合,直接民事責任を認める規定はない。近時,取引所規則違反が上場会社や役員に対する責任原因になりうることを示す最高裁判例や下級審裁判例も現れたが,その射程範囲は必ずしも明らかではない。そこで,本稿ではソフトローの1つとされる取引所規則に違反があった場合における,上場会社及びその役員の民事責任について論じる。
 本稿の前半部分では,金融商品取引法及び会社法における民事責任規定の概略とその問題点を踏まえた上で,ソフトローである取引所規則に関し,適時開示を軸として検討する。

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