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第75号(2011年9月)

取引所規則に基づく開示規制違反に対する民事責任について(下)

小林史治(筑波大学大学院博士後期課程)

〔要 旨〕

 自主規制機関の規則違反が民事責任の責任原因となるかについて,米国においては当該違反によって黙示的訴権が認められるかという問題として捉えられているところ,黙示的訴権に関して消極的に解していた連邦最高裁判決等の流れから,否定的な見解が多いものと思われる。その理由には,議会の意思として国法証券取引所等の自主規制機関による規則違反に黙示的訴権を与えるとする意図があったことを示す証拠を見い出しがたいことなどが挙げられている。しかし,米国での議論においても,議会の意図を重視することには疑問が呈されており,また,自主規制機関による規則は投資家保護のために存在することや,当該規則が証券規制の法制度の重要な一部になっていることなどを理由に,必ずしも当該論争に終止符が打たれたものとはいえないものと思われる。
 本稿の後半部分では,自主規制機関の規則に言及した裁判例を中心に,米国における自主規制機関の規則違反と民事責任に関する議論を通じ,本邦の取引所規則に基づく開示規制に違反があった場合における民事責任につき,何らかの示唆を受けることができないか考察を試みる。
 また,本稿を閉じるに当たり,適時開示に関する規則違反があった場合における要件論について,若干の試論を展開する。

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