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第79号(2012年9月)

米国金融行政100年の歴史
―1913年連銀法からドッド=フランク法まで

渡部亮(法政大学教授・当研究所評議員)

〔要 旨〕

 過去100年間における米国金融行政の歴史を振り返ると,①大きな金融危機の後には金融規制強化の動きが生まれる,②その背後では,規制強化に賛成するポピュリスト(大衆政治活動家)と,それに反対する銀行界との対立がみられる,③そうした対立を反映する形で,連邦議会内の政治勢力が分断化し,法案制定や政策運営が難渋を極める,④時の大統領政権(行政府)が,事態収拾と窮状打開のための妥協工作に乗り出す,⑤しかし収拾策や打開策自体が妥協の産物だから,後になって綻びを露呈する,こうしたことの繰り返しであった。
 2007〜08年の金融危機を受けて制定されたドッド=フランク法は,システミックリスクへの対応を任務とする金融安定監視評議会を設置し,金融市場の安定を脅かすような巨大銀行や非銀行金融企業(non-banks)の破綻処理に関する規定を定め,連邦準備制度(FED)の監査と情報開示も強化した。この点ではポピュリストの主張を反映しているが,同法の施行細則を制定する過程では,金融界が活発なロビー活動によって巻き返しを図った。ポピュリストの勢力増進とともに,フィナンシャル・リプレションという形での金融政策と財政政策の協調や,金融業の脱グローバル化が進展したのも,金融危機後の大きな変化である。

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