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第81号(2013年3月) 公社債市場:歴史と展望

Mirrlees型の動学的最適所得税の展開
―資本所得税の役割に注目して―

高松慶裕(早稲田大学商学学術院助教)

〔要 旨〕

 本稿はMirrlees型の動学的最適所得税の研究を概観するとともに,資本所得課税のあり方とその役割について考察する。従来からのRamsey型の動学的最適所得税の議論では,主に効率性の観点から,超短期ではできるだけ高く税率を設定し,長期(定常状態)ではゼロとするといった最適資本所得税の性質が得られる。一方,近年研究の進むMirrlees型のモデルは,私的情報である家計の能力に異質性があり,さらに能力が通時的なショックに直面すると想定する。この時,経済におけるセカンド・ベストの配分は,逆オイラー方程式を満たす必要があり,異時点間の歪みは正となることが明らかになる。そのようなセカンド・ベストの配分を実現する税制の一つとしては,Kocherlakota[2005]が示すような過去の労働履歴に依存した非線形労働所得税と線形資本所得税がある。この資本所得税は完全に再分配的であり,消費に関して逆進的となる。これは貯蓄を抑制することにより,誘因両立制約を緩和する役割を果たすためである。このようなMiirrlees型の議論は民間保険市場の存在や能力ショック過程に対する人的資本投資への影響を考慮しても妥当する。実際の制度設計の上でも,将来の能力に関する不確実性を考慮して資本所得課税が果たす役割を再考することは,今後の政策を考える上でも有用な視点となる。

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