第88号(2014年12月)
ドイツにおける消費者保護を目指す金融教育—U.ライフナーとiffのプロジェクト—
山口博教(北星学園大学教授)
- 〔要 旨〕
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日本ではアングロサクソン諸国の金融教育についての紹介は,数多く行われている。しかし欧州大陸諸国のそれについては数が少ない。そこで,欧州において消費者保護と金融教育を推進しているウド・ライフナーの視点と金融サービス業務研究所(Institut fur Finanzdienstleistung-iff)のプロジェクトを紹介する。このことを通して金融教育の在り方についての筆者の見方を提示する。
ウド・ライフナーはベルリン自由大学で法学と社会学を学び,ハンブルク政治経済大学で教授職を務め,既に定年を迎えている。1987年に金融サービス業務研究所を立ち上げ,消費者保護と金融教育の問題に取り組んできた。ライフナーの基本的立場は消費者保護を目指すものであるが,同時にその限界も指摘している。このため,金融サービス提供者とその需要者の間での相互学習を通した相互作用を重視する。
筆者は,このライフナーの立場を,1960年代の日本の「流通革命」に導入されたガルブレイスの「対抗力」理論を用いて発展させること試みる。「預金者保護」,「投資家保護」を基礎におき消費者を金融詐欺から守ると同時に,これに加担させないためにも金融教育が重要と考えるためである。