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第91号(2015年9月)

投資型クラウドファンディングに関する規制について

松尾順介(桃山学院大学教授・当研究所客員研究員)
梅本剛正(甲南大学法科大学院教授)

〔要 旨〕

 平成25年12月25日に公表された金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」報告書を受けて,平成26年5月に金融商品取引法が改正され,また,日本証券業協会の自主規制で禁じられていた非上場株式の投資勧誘の規制緩和を前提とした,株式投資型クラウドファンディングの規制が整備された。
 今回の規制改正は,新規・成長企業に対するリスクマネーの供給促進といっても,発行開示規制の適用除外要件の拡大など資金調達者の側の規制緩和が行われたわけではなく,仲介者の参入要件の緩和がなされたに過ぎない。たしかに,仲介者の新規参入が増加して,より多くの新規事業に大衆の資金が流れ込む大きな流れが作られるなどしてクラウドファンディングそのものが活性化することが期待できないわけではない。しかし,元来利幅が薄いとされるクラウドファンディングの仲介ビジネスに新規参入がどの程度見込めるのか,参入したとしても有望な新規事業の発掘作業にどれほど貢献できるのか。規制改正で新設された業者類型である,第一種・第二種の少額電子募集取扱業者についても,最低資本金の引き下げ等は図られたものの法規制・自主規制を併せてみた規制遵守コストは,決して低くないようであり,改正法が実際にどの程度の新規参入を促すかについては,楽観できないのではないかと思われる。既存の仲介者に対しては自主規制を中心に規制の強化がなされたが,そのことにより既存業者がこれまで展開してきたクラウドファンディングビジネスを阻害することにならないのか。
 本稿では,主として本年5月末に公表された第二種金融商品取引業協会による「電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則」(以下,二種協会規則)を取り上げ,法規制と自主規制とが業者にどの程度の規制遵守コストを負担させることになるのかという見地から,重要と思われる項目を取り上げ,検討を加える。

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