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第93号(2016年3月)

保険会社はシステミック・リスクの影響を受けるか?

大野早苗(武蔵大学教授)

〔要 旨〕

 2007,2008年には,極度の信用収縮が世界的な現象として発生し,国際金融市場におけるシステミック・リスクに関する関心が高まるとともに,システミック・リスク防止に向けての議論が高まった。また,新たなる規制強化が検討されている金融機関は,商業銀行や投資銀行のみならず,保険会社にまで及んでいる。
 本研究は,リーマン・ショックと欧州ソブリン危機の時期を対象に,主要国の金融機関のCDSスプレッドの決定要因を検証したものである。とりわけ流動性逼迫の影響に着目するとともに金融機関の相互依存性を考慮し,危機の影響の波及効果を検証する。また,銀行と保険会社の間で特徴にどのような相違がみられるかを考察する。
 元来,保険会社にとって,システミック・リスクの影響は軽微であると考えられてきたが,本研究では一部の保険会社が流動性逼迫からとりわけ顕著な影響を受けていたことがわかった。しかし,保険会社を起源とするシステミック・リスク発生の可能性は高くはないことが示された。したがって,保険会社の財務健全性の悪化が金融市場へと拡散し,市場全体の安定性を揺るがすことの蓋然性は高くはないが,保険会社が市場の混乱から自らを隔離させる対応を検討する余地があるとはいえる。

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