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第95号(2016年9月)

優先株式の最適性と契約再交渉

大森孝造(大阪経済大学准教授)

〔要 旨〕

 企業の資金調達手段は債券や株式など様々な手法があり,それぞれが最適契約となる状況や要因が研究されている。しかし,優先株式についてはそうした説明が見当たらない。本論文は,経営者と外部投資家との間でエージェンシー問題が生じる状況において,予め外部投資家への分配額を定めておくことができる優先株の機能から,その最適性を主張する。同様の分配パターンは契約再交渉とみなすことができる発行済証券の買入れでも達成可能であるが,単独では,その機会は経営者によって選択されない。これが優先株の最適性を補強する。
 本論文で示された優先株式が最適となる状況とは,資金調達規模が大きく,事業の見通しは不確実で,経営者努力が長期的な収益性に大きく影響するような場合である。また,事業の内容に関して,投資家と経営者は共通の情報を持ち,事前の動機付けが重視される場合である。現実をみれば本邦の優先株式は,そのほとんどが企業再生に伴って第三者割り当てによって発行されることが特徴である。本論文で示された優先株式が最適となる状況やモデルの特徴は,こうした優先株式発行の現実と整合的と思われる。

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