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第96号(2016年12月)

情報の非対称性と資本構成

吉田隆(MS&AD基礎研究所(株)主管上席研究員)

〔要 旨〕

 本稿は,企業の経営陣と外部投資家との情報の非対称性が資本構成に及ぼす影響を分析する。理論的には,情報の非対称性は企業のレバレッジ(負債比率)に正の影響を与えると考えられる。このことを検証した先行研究は,情報の非対称性に係る代理変数の選択に課題を残すか,又は必ずしも期待通りの結果を得ていない。
 本稿は,情報の非対称性の代理変数として,「会計情報の質」及び「ヒストリー変数」(社齢及び株式公開以降の経過年数)を用いる。1999年から2013年までの我が国上場企業のデータを用い,情報の非対称性の代理変数に対してレバレッジを回帰すると,情報の非対称性とレバレッジとの正の関係を支持する結果が得られる。また,情報の非対称性の小さい企業ほどレバレッジが低いという傾向は,金融危機の影響下にあった2007年7月から2012年5月までの時期に,それ以外の時期に比べて弱くなったことが見出される。

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