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第99号(2017年9月)

ペイアウト政策に関する実証分析—費用構造と所有構造からの検証—

篠﨑伸也(佐賀大学経済学部准教授)
ナム ホチョル(九州大学大学院経済学府)

〔要 旨〕

 本稿は企業の費用構造(Cost structure)と所有構造からペイアウト政策を検証し,以下の主要結果を得た。第1にKulchania[2016]とは異なり,変動費比率の高い企業ではなく固定費比率の高い企業が配当を選択していた。しかし第2に,変動費比率が高く外国人持株比率の高い企業は配当を選択する傾向がみられた。この結果は,次のように解釈できる。外国人株主は情報の非対称性を緩和するために,ペイアウトを要求するとされている。また企業がエージェンシー問題を抑制する目的で,投資家に現在の配当水準を維持していくというコミットメントが強い配当を利用すると言われている。よって外国人持株比率の高い企業は変動費を調整し外国人の増配要求に応えると同時に,コーポレート・ガバナンスの改善を図っている。第3に変動費比率が高く大株主が多い企業はペイアウトしないという仮説は支持されず,むしろ配当を支払う傾向にあった。従来,大株主は深刻な情報の非対称性に直面する可能性は低く,ペイアウトを多く要求する傾向はみられなかった。しかし近年,株式持合いの解消が進みそのメリットが享受されにくくなったため,大株主も配当を通して株主価値の最大化を目指していると予想される。
 さらに追加的な検証を行った結果,外国人株主が多い企業は①業績不振時に変動費を調整し配当を支払う,②配当を継続するために,将来的に発生する変動費を現在から調整することが明らかとなった。

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