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第113号(2021年3月)

国庫債務負担行為の債務性と実態分析

浅羽隆史(成蹊大学法学部教授)

〔要 旨〕

 国庫債務負担行為は,予算の単年度主義の例外のひとつだが,その規模の膨張が著しい。財務省は,国庫債務負担行為を統計上債務に含めていないが,これは不適切である。無視して良い規模ではなく,総務省などの例に倣い後年度負担分を債務に含めて把握すべきである。国庫債務負担行為は,効率化や事業の安定化などに資すると考えられるものの,現状がすべてそうした内容であるとは限らない。
 実際,国庫債務負担行為は一般会計・特別会計あるいは府省問わず,さまざまな目的に幅広く活用されている。とくに防衛関連の国庫債務負担行為は一件当たり額が非常に大きく,かつ長期契約ということで総額の規模が大きいうえ増加傾向にある。問題は,後年度への負担の先送り体質にある。防衛関連の事業に限らず,全体として後年度負担の比率は上昇しており,実質的な見えにくい債務の膨張をもたらし問題である。また,後年度への負担の先送りは,予算の硬直化にもつながる。国庫債務負担行為には,制度的に負担を先送りさせる誘因がある以上,ゼロ国債の要件の厳格化や初年度負担を一定以上とするなど何らかの追加的な統制が必要である。そもそも,政府が国庫債務負担行為の全容について,後年度負担比率や所管別・目的別など毎年度とりまとめのうえ公表すべきである。

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