第113号(2021年3月)
銀行の有価証券保有とCLO
代田純(駒澤大学経済学部教授・当研究所客員研究員)
- 〔要 旨〕
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邦銀は近年,貸出難に苦しみ,現在コロナ禍で貸出が増加しているものの,貸出金利は上昇せず,むしろ貸倒引当金等の信用コスト計上で利益は圧迫されている。このため,銀行にとり,運用資産として有価証券の存在は大きい。銀行により保有される有価証券残高は近年,わずかに減少し,その後増加している。有価証券残高の構成を見ると,国債が著しく減少し,他方で「その他有価証券」が増加している。「その他有価証券」のほとんどは外国債券である。国内債券で運用する限り,マイナス金利の影響もあり,有価証券運用利回りは低くなる。このため,必然的に外国債券での運用が注目される。外国債券は大手銀行において保有額が大きく,なかでも農林中金やゆうちょ銀行を中心としてCLO(ローン担保証券)が保有されている。大手邦銀7行のCLO保有額合計は2020年3月期には14兆8172億円であり,2019年3月期の14兆938億円より増加している。ゆうちょ銀行は,CLOの取得原価と評価損益を公表しているが,2020年3月期には1219億円の評価損となっている。2020年4月以降におけるコロナ禍の深刻化により,大手銀行によるCLO評価損の拡大が懸念される。
CLOの裏付資産となる企業向けローンは重複している。上位250社で,概ねCLO残高の50%程度を占めている。また,CLOの組入れローンでは,ソフトウエアやホテル・レストラン・娯楽といった業種の組入れ比率が高くなっており,コロナショックで影響を受けている業種の構成比が高い。CLOで組入れられている企業の格付けが,コロナ禍で相次いで引き下げられてきた。コロナによる格下げは,ピークを超した可能性もあるが,今後は不透明でもある。大手銀行のCLO保有と組入れ企業の格付けに,引き続き注目する必要があるだろう。