第114号(2021年6月)
株主優待と企業の経営指標
田代一聡(当研究所研究員)
- 〔要 旨〕
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我が国において,株主優待は非常に馴染み深い制度である。そして,我が国以外で株主優待が一般に浸透している国はおそらくない。そのため,株主優待に関する先行研究も非常に限定されており,株主優待に関わる現実の情報は非常に限定されている。本稿では株主優待と企業の経営指標との関係に関する情報を提供するとともに,優待実施企業の経営効率に関する考察を行う。
優待実施企業は優待非実施企業に対して劣る経営指標が観測された。この結果は,株主優待を行っている企業の経営が非効率的な可能性を示唆しているであろう。しかし,このことを強く主張できる結果でもない。
さらに,優待の種類を分類して分析したところ,金券優待を行っている企業のROA,EBITが相対的に高いことが観察された。金券優待は株主優待のマーケティング効果が低いと考えられる。この考えに反する状況が観察されたことは,株主優待のマーケティング効果に対して疑問を投げかけるであろう。