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証券経済研究 第103号(2018年9月)

トランプ時代の米国金融規制—マクロプルーデンスを巡る議論—

若園智明(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 本稿は米国のマクロプルーデンス関連規制を分析対象とし,行政府(大統領府および連邦監督機関)と連邦議会で展開された同規制の修正議論を整理する。DF法には十分な議論を踏まえずに制定された条項も複数含まれている。金融危機から10年を経て,米国内では金融規制を全般的に再評価する活動が見られる。
 第45代合衆国大統領に就任したドナルド・トランプは,行政命令を発令して米国内の金融規制全般の見直しを命じている。また連邦議会では,特に第114回連邦議会以降,連邦議会下院の共和党議員を中心にDF法および同法が導入した金融規制を修正する法案が多く提出されている。中でも2018年5月24日の大統領署名により,システム上重要な金融機関(SIFIs)の指定条件を緩和する法律が成立したことは注目に値する。この連邦法はDF法の中核であるマクロプルーデンス政策を見直しているが,両院の民主党議員からも賛同を得て超党派で成立した点で重要である。
 本稿は第2節で,DF法が導入した主要なマクロプルーデンス関連規制を整理し,再評価の論点提示を行う。第3節では,17年に発令された大統領令等および財務省の報告書を中心にレビューし,行政府の方針を確認する。第4節では,主に第114回連邦議会と第115回連邦議会で提出されたマクロプルーデンス関連規制の改正を意図する主要法案を比較し,連邦議会での議論が変化していることを指摘する。

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