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出版物・研究成果等

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証券経済研究 第83号(2013年9月)

ストックオプションとインサイダー取引規制

梅本剛正(甲南大学法科大学院教授)

〔要 旨〕
 ストックオプションは,会社からのキャッシュアウトを伴うことなく,役員等の会社関係者に対して,現在の株価と将来の株価の差額を報酬として与えることにより,長期的な会社業績の向上を狙った業績連動型の報酬制度である。ストックオプションの権利行使をして得た株式は,保有を継続するか,売却するかのいずれかであるが,株式の保有リスクや個人の資産配分の適正さを考えるなら,権利行使と同時に当該株式を売却するのが合理的である場合が少なくない。ところが,役員はインサイダー取引規制の「会社関係者」に当たり,未公表の重要事実に触れる機会が多いため,いつでも自社株式を売却できるとはかぎらない。そのため,役員らはストックオプションの権利を行使して取得した株式を,一定期間は継続的に保有せざるを得ない状況となっている。2000年にアメリカで設けられた規則10b5-1のように,わが国においても,会社内部者による自社株式の売り付けについて,一定の要件の下でインサイダー取引規制の適用除外を設けることが望まれるが,本稿では規則改正を待たなくても,権利行使と株式処分とを第三者に委託する「一括委託型ストックオプション」を採用することにより,インサイダー取引規制違反のリスクを負うことなく,権利行使価額と時価との差額を,金銭報酬にすることが可能であることを論じている。

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