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証券経済研究 第88号(2014年12月)
「大きすぎてつぶせない(TBTF)」問題に対する政策の実効性
漆畑春彦(平成国際大学教授)
〔要 旨〕
米国発の金融危機から6年近く,大規模金融機関(SIFIs)の「大きすぎてつぶせない(too-big-to-fail:TBTF)」問題の解決に向けて,主要各国で破綻処理制度論が展開されてきた。金融機関がTBTFであることの問題点は,①大規模銀行に対する「暗黙の公的資金支援」への期待から,それら銀行が高格付けを付与され,中小銀行に比して低いコストでの資金調達が可能となること,②銀行が,ハイリターンを得るために過度なリスクをとってしまうというモラルハザードが発生する可能性が高まることにある。
金融危機後,主要各国の政府・当局より打ち出されたTBTF問題への解決策は,大きく5つある。その第1は,「システミック・サーチャージ」の導入である。システミック・リスクを生起し得る金融機関に対し,「ピグー税」に類似する賦課を課すことで外部不経済を負担させるものである。第2は破綻処理制度(Resolution regimes)の構築である。秩序だった破綻処理を可能とし,破綻に伴う付加コストを軽減しようとする制度的な対応である。第3は,再生・破綻処理計画(recovery and resolution plan:RRP)の導入である。破綻処理計画(resolution plan)は,将来金融機関が破綻状態となった場合,具体的な体制や手続きを含め,事前に(平時のうちから)破綻処理方法を策定するものである。第4は,銀行構造の改革(banking structual reform)である。業務制限や部門分離により,商業銀行部門を投資銀行部門のリスクから遮断することを目的としている。そして第5は,金融機関の規模の制限である。金融機関の規模を本社所在国のGDPの一定割合以下に制限しようとする策である。
いずれも問題解決策としては合理性はあるが,欠陥や限界を指摘する研究も公表されている。これらをもってしてもTBTF問題は解決しないという見解もある(例えばHaldane[2013])。本報告では,先行研究を参考に,TBTF問題を解決すべくこれまで打ち出された対策の実効性について考察してみたい。
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