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証券経済研究 第91号(2015年9月)
ギリシャにおける国有企業民営化の現段階
土田陽介(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査部研究員)
〔要 旨〕
国有企業の民営化問題は,それに取り組もうとする経済の構造的体質を文字通り「体現」している現象である。本稿は,ギリシャの国有企業の民営化問題に焦点を当てて,債務危機が顕在化して以降の同国経済の展開を分析し,その問題点を整理することを目的とする。
累積債務危機の過程のなかで国有企業の民営化の推進が改めて求められるようになったギリシャであるが,この問題は,1970年代に構築された社会主義計画経済的な供給体制にまで遡ることができる根深い性格を有している。また累積債務危機下の金融支援のコンディショナリティーとしてその推進が求められたとしても,ギリシャ政府の保有する国有資産の性質(主に国内向けのサービス業)や,同国経済を取り巻く諸環境を鑑みれば,EUやIMFが求めるような成果が直ちに出るような状況でないことも明らかである。
スペインなどギリシャ同様に構造改革を要求された重債務国も存在するが,ギリシャだけが国際金融市場から締め出されており,より厳しい緊縮が課されている状況が続いている。つまり,ギリシャにおける今回の民営化の最大の特徴は,その極度な政治的・経済的混乱の下でその実行を余儀なくされたことにある。言い換えれば,マクロ経済政策の自律性がなく,その安定を確保することが容易ならざる環境の下で民営化の推進を求められたという点において,他の開発途上国や体制移行国との経験を大きく違えていると整理できる。
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