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証券経済研究 第105号(2019年3月)
イングランド銀行による中央銀行デジタル通貨(CBDC)の検討
斉藤美彦(大阪経済大学経済学部教授・当研究所客員研究員)
〔要 旨〕
近年において各国においてペイメントの態様は大きく変化しているが,その中でも従来型技術とは異なる「分散型台帳」システムに立脚したビットコイン等の仮想通貨は大きな注目を集めてきた。イギリスの中央銀行であるイングランド銀行(BOE)もまた,その動向に大きな関心を示し調査・研究を行ってきているが,これまでのところ仮想通貨は貨幣として十全の機能を果たしてきておらず,将来的にもそれがペイメントにおいて一般化していくことは考えにくいと結論付けた。ただし「分散型台帳」システムは,重要な技術革新であり,それを利用した中央銀行デジタル通貨(CBDC)について,BOEは検討課題のひとつとして重視している。検討の中心となってきたのは,すべての経済主体が中央銀行の負債としてのCBDCにアクセス可能な形態のものであるが,そこには民間銀行の預金が減少していく‘ナロー’バンク化という問題点,すなわち民間銀行による信用創造機能が失われるという問題点があり,このことも影響してかBOEは近い将来におけるこの形態のCBDCの導入には慎重なスタンスをとっているように思われる。
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