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証券経済研究 第106号(2019年6月)
ドイツにおける銀行再編の動向—州銀行の二極分化と大銀行の合併問題—
代田純(駒澤大学経済学部教授・当研究所客員研究員)
〔要 旨〕
ユーロ圏では2014年以降マイナス金利が導入され,銀行の利鞘は低下している。貯蓄銀行や信用協同組合といったリテールの地域金融機関では比較的高いが,大銀行や州銀行などホールセール銀行では低い。低い利鞘も一因となり,北部の州銀行は不良債権問題に苦しんできた。また大銀行はリーマンショック以降,不振から脱却できないでいる。州銀行では再編が進行し,大銀行では合併問題が起きた。HSHノルド銀行では,2018年に株式が民間投資家に売却され,ノルド銀行では州政府と貯蓄銀行が増資に応じる方向である。また,ドイツ銀行とコメルツ銀行の合併構想が注目されていたが,2019年4月下旬に中止された。ただし,イタリアのウニ・クレディットがすでにコメルツ銀行に対して関心を表明しており,今後も合併交渉は継続すると見られる。
ドイツにおいても銀行数と銀行支店数は傾向的に減少してきた。銀行数は,2005年に1,988行あったが,2017年には1,538行で,12年間で450行が減少した。また支店数は2008年に3万9,565支店であったが,2017年には3万126支店で,9,439支店が減少した。州あたり人口比で銀行数を見ると,全国平均では10万人あたり2.29行であるが,ヘッセ州(フランクフルトが属する)では5.12行,バイエルン州(ミュンヘンが属する)で3.12行となっている。
ドイツにおける貸出は,住宅ローンが中心になっており,住宅ローンでは貯蓄銀行や信用協同組合など,リテールの地域金融機関が高いシェアを有する,と見られる。他方,貸出市場で大銀行や州銀行などのホールセール銀行はシェアが小さい。こうした構造が,州銀行再編や大銀行合併問題の背景にあると見られる。
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