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証券経済研究 第108号(2019年12月)
アメリカ型と日本型証券化市場の形成とその特徴
掛下達郎(福岡大学商学部教授・当研究所客員研究員)
〔要 旨〕
日米証券化の先行研究においては,初期の嚆矢となる研究ということもあり,マクロ経済における証券化の全体像は必ずしも明らかではない。そこで,本稿では,資金循環統計の時系列データを用いて,証券化市場の形成とその特徴的な型を探ることにしたい。
考察する課題は,日米の①証券化商品の市場構成とその発行者を特定すること,②証券化商品の保有者とその資金源泉を探ること,③証券化商品の担保とその特徴を明らかにすること,の3点である。
①まず,日米ともに,世界金融危機を経て,公的機関の発行する証券化商品が中心となった。
②米国の証券化商品の保有者は,まず機関投資家であり,その資金源泉は貯蓄であった。金融危機前に外国人投資家が参入し,米国の貿易赤字が中国や日本から還流した。危機に際して,資金源泉に公的信用供与が追加された。日本の証券化市場における投資の機関化は,株式・債券市場よりも進行し,その資金源泉は貯蓄である。しかし,米国のような多様な投資家と公的信用供与の厚みは生じていない。
③米国の証券化商品は,住宅モーゲッジ担保証券が中心で,個人保証を回避し,証券化を世界で初めて可能にした。一方,日本では不動産信託受益権を利用した証券化が米国に約30年遅れて普及した。日本では個人保証付きが一般的で,住宅貸付そのものを証券化することは困難だが,信託受益権を設定すると証券化への途が開かれる。
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