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出版物・研究成果等

証券経済研究 第13号(1998年5月)

自己株式取得の経済効果

岡村秀夫(大阪研究所研究員)

〔要 旨〕
 従来,商法および税制上の制約により,日本では自己株式取得はほとんど行われていなかった。だが,1994年の商法改正,1995年のみなし配当課税凍結,そして1997年の消却特例法成立などによって自己株式取得を行う環境が次第に整備され,利益消却を実施あるいは予定している企業は40社以上にのぼっている。
 ところで,自己株式取得が経済効果を持ち,株価に影響を与えるのは,市場の効率性に関する何らかの前提が満たされていない場合だと考えられる。例えば,税制が企業の財務政策に対して中立的でない場合や,市場において企業経営者と投資家の間に何らかの情報の非対称性・不完全性が存在する場合などである。
 本稿では非対称情報下における自己株式取得の情報伝達効果に焦点を当てて分析を行った。各企業間で既存の投資価値に大きな差がなく,追加投資の収益性が高く,また(潜在的に)高収益をあげ得る企業に対して投資家が比較的小さな請求権しか要求しない場合には,セパレイティング均衡が存在する可能性が高くなり,自己株式取得が情報伝達効果 を持ち,株面に影響を与え得ることが明らかになった。その際,経営者が買い戻しに応募できないことや(多数の)自社株を保有していること,そして報酬が株価に連動していることは情報伝達効果 を発揮させる上で重要である。

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