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出版物・研究成果等

証券経済研究 第14号(1998年7月)

シンガポールの株式流通市場

城山昌樹(日興リサーチセンター(アメリカ)副社長兼ワシントン支所長)

〔要 旨〕
 (1) シンガポールの株式流通市場は,(1)メインボード,(2)CLOBインターナショナル,(3)SESDAQ,(4)フォーリンボード,の4市場に大別される。メインボードはシンガポール株式,CLOBインターナショナルはマレーシア株式の売買が中心となっており,時価総額で見るとこの2市場が大部分を占めている。
 (2) シンガポール株式市場は,1990年初のマレーシアとの重複上場廃止時にCLOBインターナショナルを創設するなど,市場の充実策を進めてきた。そうした努力の奏功や,他地域からの資金流入もあり市場規模は順調に拡大,92年まで1,000億S$に達していなかったメインボードの市場時価総額は93年には2,335億S$と前年の2.4倍に拡大,97年末では3,000億S$台に達している。
 (3) シンガポール株式市場では,銀行や政府系企業のように外国人に取得制限のある株式について,外国人用株式を別枠で発行し,取引を行ってきた。通常,外国人用株式にはプレミアムがついており,同一企業で2つの株価がついていたが,97年に入って,政府系のシンガポール・テクノロジー傘下の企業が相次いで外国人用株式を廃止したのをきっかけにその見直しが進みつつある。
 (4) 成熟した経済,アジア通貨危機をきっかけとした域内経済の不振,それに伴う域外への資金流出など,シンガポール市場を巡る環境は深刻さを増している。政府も金融,資本市場の規制緩和を急いでおり,上場基準の見直しや手数料自由化などで市場活性化を図ろうとしている。アジアの金融センターとしての地位 をより強固にするためにも早期実施が望まれる。当面,周辺諸国の状況からシンガポール経済,市場も厳しい状況が続きそうだが,低カントリーリスク,充実したインフラを持つ当市場のポテンシャルが完全に否定されたわけではない。市場の見直し,改革を進め,環境が好転した時に再び資金流入が優先的に行われるような施策をこの時期に行っておきたい。

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