出版物・研究成果等
証券経済研究 第14号(1998年7月)
「長期,固定,低利資金供給システムとしての公的金融」の経済的機能
米澤康博(横浜国立大学教授)
〔要 旨〕
公的金融の意義として,長期,固定,低利資金の供給システムをあげる意見がでてきている。これらの議論は「ニュー財投論」と呼ばれ,これら特徴を有している公的金融であるから社会資本の整備等が可能となり,それは決して民間金融機関では提供できないとしている。
そこで本論文では公的金融のこの特徴を正面から取り上げて,(i)そのような長期,固定,低利な貸出が何故可能であるのか?,言い換えれば何故民間金融機関では無理であるのか,(ii)このような貸出はどのような経済主体にとって有用なのか,(iii)現在検討されている財投改革によって,長期,固定貸出の金利はどのような影響を受けるか,を分析することを目的とする。
本論文の主要な結論は以下の通りである。金利変動リスクを好まない企業にとっては固定金利借入を好むことになるが,そのような企業への固定金利貸出は民間金融機関より公的金融の方が金利水準面 で優位であり,この点に公的金融の存在意義があることになる。これは民間金融機関がリスクに対して「回避的」であるのに対し,公的金融,なかでも特に資金運用部がリスクに対して「中立的」であると考えられるからである。
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