出版物・研究成果等
証券経済研究 第15号(1998年9月)
欧州通貨統合に伴う債券投資の実務対応
河内勝彦(パリバ証券外国債券部部長代理)
〔要 旨〕
欧州通貨統合まであと数ヶ月となり,投資家及び発行体の関心はその実務面 の対応に向けられている。欧州の金融市場参加者は,実務面での対応について,各方面 で準備作業を進めている。債券,株式の額面変更に始まり,ユーロ建て債券先物市場の創設,ユーロ建て指標金利の創設,市場慣行の変更など多岐にわたるシステム変更が迫られており,関係者はそれら各種問題点を把握すると同時に,対応をしなくてはならない。しかしながら,実務面 でのこうした変更について整理した資料が少なく,欧州内での各種作業団体や各金融機関からレポートが出されている程度である。本稿では,こうした状況を踏まえたうえで,解説していくこととする。
欧州の債券に携わる関係者の間で,最も深刻な問題点は,ユーロに通 貨が変更されることに伴う額面の変更(リデノミネーション)であろう。国によりその額面 変更の対応が異なる場合もあり,関係者は個別の国債及び社債について額面 変更の種類,方法,対応を把握する必要がある。国債の額面変更は1998年年末の週末を利用して一斉に行われる(ビッグ・バン方式)予定である。額面 変更された後にも,最低取引額面の導入を表明している国もあり,各国の対応には注意が必要である。また,ユーロへの変換を利用し,各国間で異なっていた市場慣行を統一すること(リコンベンション)も検討されている。
こうした変更点に加えて,将来の債券市場の形成についても解説を加えておいた。債券のベンチマークはどの債券になるのか,債券先物市場はどののように影響を受けるのか,短期の指標金利はどうなるのか,また,デリバティブ市場への影響についても言及を試みた。
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