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出版物・研究成果等

証券経済研究 第17号(1999年1月)

エクイティファイナンス諸規制についての歴史的考察

篠秀一(積水化学工業総務部部長)

〔要 旨〕
 エクィティファイナンスについての規制は商法および証券取引法などの法令によるものといわゆる証券界の自主ルールによるものとがあった。商法はエクィティファイナンス決定を取締役会決議事項とするなど株主に対する規定を定め,証券取引法は投資家に対するディスクロジャー義務などを規定している。一方,発行の適否を決める発行基準,一回の発行株数・発行額の限度,発行条件,利益還元・利益配分などは自主ルールで規制され,実務的には,法令以上に重要な役割を演じて来た。
 自主ルールを時間の経過に伴って,規制形成期(〜昭和50年),自主ルール期(昭和51年〜平成3年),日本証券業協会規則期(平成4年〜平成9年)の3段階に区分できる。ルールの骨格は昭和40年代後半に出来上がった。主要な内容は3点。第一は株主への利益還元,第二は時価発行銘柄の厳選と当該株価への監視,第三は需給調整の問題である。50年代にはいると,時代の要請に合わせルールを変更することがたびたび行われる。また新しいことを始めるにはまずルールを決めてからという慣行が定着した。平成4年からは,いわゆる証券界の自主ルールに代わり日本証券業協会が制定した「有価証券の引受に関する規則」など2つの規則に委ねられることになった。
 このような自主ルール・自主規制は,第一に公共財である市場をまもるため,第二に知識に乏しい一般 投資者を保護するため,第三に関係当事者間の利害調整のための役割を担って来た。その一方で時代が下るとともに,規制により新商品開発意欲が損なわれたり開発が遅れたりすることや国内の規制を嫌い海外にファイナンスが流れるいわゆる空洞化現象を引き起こすことなどの矛盾が生じて来た。そして,現在ではディスクロージャーの充実など自己責任原則を問う仕組みが整ってきたことに加え金融・証券市場のボーダレス化の進展でその役割を終えつつある。

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