出版物・研究成果等
証券経済研究 第18号(1999年3月)
社債市場の新展開
後藤猛(経済評論家)
〔要 旨〕
我が国企業の国内社債発行は1990年代に入り急速に増大し,最近では月間1兆円のペースで発行が進められている。80年代には空洞化の危機感さえあった社債市場が,設備投資減退という情勢下にも拘わらずこのように活況となってきたのは,いわゆる貸し渋りという銀行ローンの減退に直面 した企業が市場からの直接調達へシフトしているという現象面のみならず,社債を含めた我が国長期金融システムの構造的変革の進展が背景にある。
すなわち,一方においては,金融債を原資として長期信用銀行が長期融資を行うことを企業長期金融の中心方式とし社債を限界的調達手段と位 置付けてきた我が国長期金融システムがもはや大きく後退し,これに対応して,戦後起債市場再開以来の社債発行市場システムが大改革され,社債発行拡大への体制が整ったのである。
1988年のプロポーザル方式導入により,39年間社債発行を統制してきた起債会は消滅し,つづく一連の制度改革により,受託銀行は証券子会社を作って社債発行引受の推進勢力となり,商法の社債発行限度は廃止され,受託銀行制度も廃止されて社債管理会社に取って代わられ,さらに社債発行の適債基準撤廃,無担保発行基準も撤廃となり,社債市場はようやくグローバル・スタンダードの自由な新展開への軌道に乗ることができたのである。
最近の社債発行形態は,券種を1億円券のみにすることで社債管理会社をも不設置とし,無担保で,ターゲット・ディールもあり,銀行の証券子会社が引受主幹事として推進しているものが約半分を占める,というのが大勢である。
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