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出版物・研究成果等

証券経済研究 第21号(1999年9月)

構造転換が進む証券界

二上季代司(大阪研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 1990年の株価暴落と翌91年の証券不祥事で旧来型の証券業経営を否定された日本の証券業界に,ようやくこれに替わる新たな証券業経営ならびにそれにふさわしい経営組織・人事制度等の経営改革への胎動が見え始めた。1997年がその転機となった。97年前後に,(1)新規参入と既存業者の退出が顕著となり,(2)大手証券と外資や邦銀との相次ぐ資本・業務提携,(3)法人営業,個人営業の両面 に於けるビジネススタイルの革新,(4)経営組織と人事制度における革新が顕著となったのである。
 その背景として,いわゆる金融ビッグバン構想が97年6月に公表され,証券行政がこれまでの漸進的規制緩和から抜本的市場改革のスタンスに替わったことが指摘できるが,さらにその根本では,証券業自体の構造転換が進行していることに注目したい。日本経済自体の構造転換が新しい証券ビジネス・営業スタイルの土壌をはぐくみ,それを商機につなげようと新規業者が参入する一方,既存業者の間からもこれに呼応して経営組織や人事制度を改革しようという動きがでているのである。まさに「組織は戦略に従う」(チャンドラー)のだが,戦略自体も産業構造に規定されている。
 このような過渡期の時代には,革新的なビジネス・営業スタイルの萌芽を大事にすべきであって,それを抑制するようなルールは再検討すべきであろう。

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