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出版物・研究成果等

証券経済研究 第21号(1999年9月)

ユーロ導入後のヨーロッパ金融・資本市場

吉川真裕(大阪研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 1999年1月に単一通貨ユーロが導入され,EMUは参加11カ国の通貨交換比率が固定されるフェーズBに移行した。ユーロの紙幣と硬貨が出回り,各国通 貨が回収される2002年のフェーズCに向けてヨーロッパ各国では準備が進められており,11カ国の通 貨交換比率が固定されたことによってヨーロッパの金融・資本市場も大きな変化を遂げようとしている。
 導入後3カ月間の状況を振り返ってユーロ導入の影響を評価することは尚早ではあるが,今後のヨーロッパ市場の動向を占う意味では無意味だとは言えないだろう。本稿では,こうした観点からユーロ導入直後の3カ月間の状況を,ドイセンベルグECB総裁講演録,イングランド銀行報告書,BIS四半期報告書をもとにして検討してみた。
 ユーロ導入の影響を最も大きく受けたのはマネーマーケットであり,ユーロ導入直後に各国短期金利はユーロ建て短期金利(EURIBOR)に収束した。債券市場でもユーロ導入後に発行額は急増しており,ドル建て債には及ばないものの,ユーロ建て債は国際金融市場において確固たる地位 をすでに獲得している。他方,株式市場ではユーロ導入後に予想されたほど大きな変化はみられていない。
 1999年第2四半期に入ってユーロ建て債券発行額は再び増勢に転じ,ユーロの対ドル・レートも底を打った兆しをみせており,ヨーロッパ市場はより安定した局面 を迎えつつあるようである。しかし,ユーロの導入という歴史的実験はまだ緒についたばかりであり,今後の推移を見定めてユーロ導入の影響を検討する必要があることは言うまでもないことである。

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