出版物・研究成果等
証券経済研究 第22号(1999年11月)
アメリカの機関投資家とコーポレート・ガバナンス:研究視角設定の試み
渋谷博史(東京大学教授・当研究所兼任研究員)
〔要 旨〕
健全な市場経済を維持するには,民主主義的なチェックが働くという条件が必要であるというのが,本稿で取り上げる米国議会公聴会記録における民主党リベラル派の哲学である。その公聴会では,民主党リベラル派が,大金融機関や大会社における株式所有関係や重役兼任関係を通 したいわゆる「エスタブリッシュメント」の形成や,その関係を通した密室的な取引慣行を,反「自由企業社会」的であると批判した。なぜなら,社会構造の中心にある企業領域が,民主主義的な基準からみて「ブラック・ボックス」になっているなら,アメリカ社会の民主主義なるものは「尻抜け」構造といわざるを得ないからである。
そういう意味で,コーポレート・ガバナンス論は,21世紀に市場経済が民主主義あるいはその背後にある人間社会と折り合いをつけていけるのかという,きわめて大きな枠組みの中心に据えられるべきものである。決して「儲けの分け前の行方」というように矮小化して論じる問題ではないと考えたい。今日の「日本的」な経済システムの改革において基準とされる「アメリカ的な市場論理」が,どのような条件の下で機能すべきなのかを理解するための基礎的な情報提供というのが,本稿執筆の動機であった。
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